非認知能力の真実(個人的見解) | 普通の子がこつこつ頑張る中学受験

非認知能力の真実(個人的見解)

非認知能力

息子が生まれた頃から「非認知能力」という言葉が教育や育児関連の記事で取り上げられることが多くなり、最近はすっかり定着してきたと感じます。

ただ、その本質について、深く理解している人は少ないのではないかと思います。

中には専門家や先生と言われる人達が発した表面上の言葉を鵜呑みにし、真逆の子育てをしているような方もいます。

近年のこのような状況には、個人的に大きな危機感を抱いています。

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ペリー就学前プロジェクト

非認知能力という言葉がが広まったきっかけは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジェームズ・ヘックマン教授によるペリー就学前プロジェクトだと思います。

この実験は以前「非認知能力の誤解」でも書きましたが、貧困層の子供を2つのグループに分けて、一方には質の高い教育を受けさせ、もう一方には教育的な支援はしませんでした。

その結果、教育を受けたグループは、教育を受けなかったグループよりも様々な項目で良い結果が出ました。

幼児教育を受けたグループと受けなかったグループで差が出たのは、教育を受けることで、目に見えない非認知能力が伸びたからだと言われています。

つまり大元の話は、貧困層の子供達でも、幼児期に大人が教育的な介入をすれば良い影響があるという話でした。

だけど、なぜか日本で広まっている話は、幼児期や低学年は非認知能力が大切だから、子供の自主性を尊重して好きなことをして遊ばせましょうという話が多いです。

非認知能力を鍛える

私は数年前からずっと非認知能力という言葉が独り歩きしていることに危機感を感じています。

非認知能力を鍛えるために子供に好きなことをさせれば良いとか、自由に遊ばせれば良いという方も多くいます。

それどころか幼児教育や早期教育をすると、子供の非認知能力が伸びないといった真逆のことを言われる方までいます。

だけど、本当に子供を好き勝手に遊ばせるだけで非認知能力が伸びるのであれば、むしろ教育的な介入を一切しなかった子供達のほうが非認知能力は伸びたのではないでしょうか。

だってその子達は、先生に何も指示されない分、もっと自由に自分の好きな事をして過ごせていたはずですよね。

つまり日本で多くの人が非認知能力はを伸ばすために推奨している子育て論は、むしろ何の教育も受けずに非認知能力が低くなってしまった子供達の子育てに近いのではないでしょうか。

だからこそ、誤った認識がどんどん広がっていってるのではないかという怖さを感じています。

年収

近年、非認知能力を万能なもののように思われている方も多いです。

非認知能力さえ鍛えておけば将来子供が成功すると思われている方もいますが、そういった考えは大変危険だと感じます。

例えば年収に注目すると、ペリー就学前プロジェクトで教育を受けたグループは40歳の時点で60%が年収2万ドル以上になり、割合としては教育を受けなかった層の1.5倍となりました。

ペリー就学前プロジェクトが実施されたのは1960年代前半からなので、当時幼児だった子供が40歳ということは、だいたい1990年代後半の年収ということになります。

当時は今よりも平均年収は低かったと思いますが、それでも年収2万ドルは、一般的に見て、ものすごい高収入とまでは言えない額だったのではないでしょうか。

つまり非認知能力が高くなったとされている人達も、大きな成功を手にして高収入になったわけではなく、あくまで一般的な収入を得られるようになったにすぎないのです。

犯罪率

ペリー就学前プロジェクトでは犯罪についても調査されていますが、教育を受けたグループで逮捕歴が5回以上だったのは36%だったのに対し、教育を受けなかったグループで逮捕歴5回以上だったのは55%だったそうです。

他にも生活保護を受給したことのある割合は教育を受けたグループのほうが低かったり、高校を卒業した人の割合は教育を受けたグループのほうが高いなど、良い影響がありました。

だけど犯罪者にならないとか、高校を卒業するというのは、日本で普通の生活を送っている人達からすれば、当たり前だと感じることなのではないでしょうか。

日本の価値観に置き換えるなら

ペリー就学前プロジェクトの結果を、私が勝手に現代の日本の価値観に置き換えるとしたら、本来は中卒や高卒で派遣社員や日雇い労働者になっていたはずの子供達が、大卒になり中小企業で正社員として働き、平均的な収入を得て幸せに暮らせたという話だと思っています。

つまりペリー就学前プロジェクトで得られた効果は、元々恵まれた環境にいる子をさらに伸ばすようなものではなく、恵まれない家庭の子を人並みまで伸ばすものだったのではないでしょうか。

貧困層の子供が一般家庭の子供達に追いつくという視点で教育を考えるのなら、本当に必要だったのは、類まれなる才能を伸ばすような教育ではなく、もっと基本的なしつけに近い教育だった可能性が高いのではないかと考えています。

マシュマロテスト

貧困層の子を普通レベルにまで押し上げるためには、どのような力を育てていけば良いか、私なりに考えてみました。

そして一番必要なのは、自制心や忍耐力だという結論に至りました。

私がそう考えるのには、いくつかの理由があります。

そのひとつはマシュマロテストという実験です。

実験の内容は4歳の子供の前にマシュマロを置き、もし15分間マシュマロを食べるのを我慢できたら、あとでもう1つマシュマロをあげると約束して大人は部屋を出ます。

結果的にマシュマロを食べるのを我慢できた子供達のほうが、我慢せずに食べてしまった子供達よりも、優秀に育ったそうです。

つまり自制心のある子ほど、優秀に育っていることになります。

また近年成功のために大切なのは、GRITというやり抜く力だと言われています。

だけど、これは言い変えれば、自分を律して辛い時もやり続けるという自制心や忍耐力だと捉えられるのではないでしょうか。

自制心と忍耐力

例えば自制心や忍耐力のない子は、学校でも仕事でも何か嫌なことがあると、その時の感情に任せて辞めてしまいがちです。

一時の感情に任せて職を転々とすれば、年齢が高くなるほど働ける場所も限られてきますし、当然収入も低くなります。

そうやって貧困に陥った人達は、罪を犯してしまったり、生活保護を受給する可能性が高くなるのではないでしょうか。

実際にペリー就学前プロジェクトで教育を受けずに非認知能力が伸びなかったとされるグループのほうが、高校卒業率が低く、生活保護を受給率は高く、犯罪率も高いという結果になっています。

これらの観点から、私は非認知能力の正体は自制心や忍耐力ではないかと考えています。

少しの我慢と成功体験

それでは、自制心や忍耐力を育てるためにはどうしたら良いのでしょうか

それは小さい頃から、少しの我慢と努力を子供にさせて、我慢して努力した結果良いことがあったという経験を多く積ませることだと考えています。

ペリー就学前プロジェクトで行われた教育プログラムの詳細については公開されていません。

ただ同じヘックマン教授が、IQ向上を目的として行ったアベセダリアンプロジェクトでも、子供達の非認知能力は伸びています。

プロジェクトの目的や開始年齢も違うので、プログラムの内容はペリー就学前プロジェクトとは違う内容だったのではないかと思います。

だけど、ペリー就学前プロジェクトと同様に子供達の非認知能力は伸びています。

つまり大切なのは行われた教育のプログラム内容ではなく、そのプログラムを通じて育った子供達の自制心や忍耐力だったのではないでしょうか。

幼児期に自制心や忍耐力が育ったことにより、その後の人生でも、辛い時に諦めず頑張ることができたのではないかと、私は考えています。

習い事

世の中には、幼い頃から習い事ばかりさせると非認知能力が伸びないという方もいます。

だけど習い事は、うまく活用すれば非認知能力を伸ばせると私は思います。

大切なのは、子供が少し我慢して練習したら上手にできるようになったというプラスの体験を積み重ねていくことだと思います。

だから家庭で毎日練習が必要な習い事のほうが、非認知能力は伸びやすいと感じます。

少し面倒なことでも我慢して頑張ったら良いことがあったという体験を積み重ねることで、子供が自主的に行動できるようにもなりやすいと思います。

ただ、とりあえず習い事をやらせれば何でも良いというわけでもありません。

家での練習をさぼったけど平気だったというような間違った成功体験をつませると、かえって逆効果になることもあると思います。

ちなみに非認知能力を伸ばしたいから、習い事も家庭学習もさせずに子供を自由に遊ばせるというのは、むしろ非認知能力が伸びなかった子供達の育て方に近いと感じるので、おすすめできません。

習い事でなくても良いですが、幼児期はただ好き勝手に子供を遊ばせるのではなく、自制心や忍耐力を育てられるような取り組みをしておいたほうが良いと思います。

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